熊本大学LGBTsサークル~polaris~

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オススメ2ぼくはちょっとイエローでホワイトで、ちょっとブルー

第1回はこちら ↓

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 今回はノンフィクションの本を紹介します。

こちらも1枚の画像にまとめたので、文章読むのしんどいよーという人でも

安心です!(時間があれば記事も読んでほしいです……)

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 この本は、アイルランド人の父(白人、ホワイト)と、

日本人の母(黄色人種、イエロー)を親に持つ”ぼく”のイギリスでの学校生活を

描いた作品です。著者である母は、「最底辺保育所」で働く保育士、

父は大型ダンプの運転手、そして息子である”ぼく”は、いわゆるエリート校である

カトリックの公立小学校に通い、生徒会長まで務めていたという、順風で平凡な

生活を送っていました。

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(恥ずかしながら、日本史選択だったのでアイルランドの場所知りませんでした……)

 しかし、”ぼく”が進学先として選んだ中学校は、優等生が集まる学校とは

正反対の「元底辺中学校」だったのです。そこは、社会の縮図とも言えるような

ところで、人種、宗教、貧富、住んでいる場所などあらゆる多様性に満ちていて、

思春期ということもあり、いじめ、格差、人種差別、暴動が絶えない学校だった

のです。学校生活を送る中で、”ぼく”は様々な悩みを抱えますが、

その悩みを抱え込むことをせず、母に相談しながらも、正面からぶつかっていこうと

します。「元底辺中学校」だからこそ見えてくる問題、そして時には

大人ですらも答えを見つけきれていない問題も投げかけられてきます。

 どうしてこの本を紹介したのかというと、日本国内だけを見ていては視野が

狭すぎるということを痛感させられたからです。というのも、「差別」という

ものに対して日本はあまりにも無頓着だからです。

 日本は島国ということもあり、基本的には「日本人」という種族が大半を

占めているため、「自分が日本人だ」ということをあまり意識しないことが多いと

思います。しかし、イギリスは同じ島国であっても、移民国家と言われるように

様々な人種の人が住んでいます。そうするとどうしても、出身地や肌の色、

移民なのかそうではないのかによって、人種差別(レイシズム)が発生して

しまうのです。

 他にも日本人はやたらと中国人、韓国人と区別したがりますが、欧州から見れば

同じ黄色人種、アジア人という区別でしかないそうです。

「イエローモンキー」とか「春巻き」という悪口が浸透しているらしいです。

 一方、他人種に触れる機会が少ない日本では、日本人なのか外国人なのかという

区別をしてしまいがちです。視野が狭いことは、本質を見失うことにつながります。

半分ホワイト、半分イエローのハーフである”ぼく”(ちなみに本のなかではハーフ

という表現は大変失礼だと書かれています)だからこその疎外感や違和感が

あるようです。

 また、日本は宗教にとても寛容なので、お寺と教会と神社が隣り合っていたり、

仏教徒なのにチャペルで結婚式をしたり、あまり意識しない人も多いです。

ただ、海外で「無宗教です」と言うとドン引きされるほど、彼らにとって宗教は

大切なものです。イギリスでは、公立のエリート校はカトリックと決まっていて、

その学校で教えられた(親を真似して勝手に身についたということもあるでしょう)

話すときのなまり、アクセントでない場合は出世できないと言われるほどです。

いい学校にはもちろん入学希望が集中しますが、定員オーバーの場合は

住んでいる場所が学校に近いひとを優先するというルールがあるようで、

貧富の差がそのまま学歴の差につながる世界なのです。

 日本では様々な方言があり、標準語を身に着けるように言われることはあっても、

方言を話したから出世できないなんてことはありませんし、学歴フィルターは

多少あっても宗教で出世への道が閉ざされるなんてことはまずないでしょう。

お金がないから進学できないということも、塾に通えないとか教材が買えないなど、

多少は影響しますが、努力次第で乗り越えることができて、奨学金といった制度も

存在しているため、絶対とは言えませんがないと思います。

 今あげたのはほんの一例で、この本の中にはリアルなイギリス(特に学校)を

垣間見ることができるのです。日本にはない教育制度、文化、考え方がたくさん

あって世界が広がるような気がします。

 一部ではありますが、LGBTセクシャリティについても取り上げられていて、

まさに多様性(ダイバーシティ)とは何なのかということを見つめ直すための

教科書だと思います。

 また本のタイトルである「ぼくはちょっとイエローでホワイトで、

ちょっとブルー」をはじめとする心に刺さるフレーズがたくさん出てくるのも

魅力の一つです。本の表紙の裏にはオスカー・ワイルド(「サロメ」や

幸福の王子」は、名前は聞いたことある人も多そうですね)の言葉をもじった

「老人はすべてを信じる。中年はすべてを疑う。若者はすべてを知っている。

子どもはすべてにぶち当たる」という言葉があって、まさにこの本の

言い得て妙な表現でしょう。

 他にもシンパシー(共感)とエンパシー(同情)の違いをネイティブの視点から

書かれていたり、相手の立場に立つという意味のことわざである「他人の靴を履く」

のように、イギリスで使われるスラングやジョークが使われていたりして、

他の本にはないワードセンスや言い回しがとても新鮮です。

 今世界中で流行しているコロナウィルスを、武漢ウィルスということは差別だと

問題になっていましたが、言われるまで差別だと気づいていなかった人もいると

思います。無論、気づくこともなく使い続ける人だっているほどです。

差別について知っていないと、知らずのうちに誰かを傷つけていることだって

あるのです。家に引きこもらないといけない今だからこそ、世界のことに目を

向けてみませんか?2019年の本屋大賞を受賞したぐらいですから、人生で1度は

読むべき本だと思いますよ。

 

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